王子に姫の恋情を…




…唇が離れる頃には

私の体は酸素不足で倒れそうになっていた



はぁ…はぁ…


死ぬかと思った…



キスで死者が出るとしたら絶対私が一番最初だよ



ケホッと咳き込みながら涙目で彼方を見上げると
少し火照った顔で私を見つめていた



…彼方がこんな顔してるなんて



貴重かも



ああ~!写真に収めたい~!


『…お前、また変な事考えてるだろ』


ギクッ


細ーい目でいぶかしげに私を睨む彼方

何でばれてんの?



思わず後ずさろうとしたけれど
彼方に腕を掴まれてそれ以上動けなくなった




真剣な瞳


…きっと、何度だって
この瞳に見つめられると

私は恋をする



『由香里は何も考えんな』


その声に恋をする

その姿に恋をする

その心に恋をする




「…うん」

『俺の事以外は』彼方はそこまで言おうとしたが
急に恥ずかしくなって止めた

彼方には今のそれが言葉に出す精一杯なのだ



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