王子に姫の恋情を…
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「な~にが『悪いけど斉藤さん…お願いが…』なのよっ!」
私の手には研究授業で使ったらしいスクリーンと映写機
あの先生なんで私ばっかり…
この断れない性格が本当に辛い
スクリーンを左手に
映写機をゴロゴロと右手で器用に動かしていく
階段とか使っての移動は今回させなくていいんだけど
移動距離がものすごく長い!
校舎の端から端に持っていってくださいって言われたようなもん
あーあ、こんな事頼まれなければ今頃彼方と一緒に帰ってたのにな…
何だか今日、彼方は用事があるらしく先に帰った
「奈津実も部活だしなぁ…」
と、独り言をぶつぶつ言っていたら
『斉藤さん!』
ビックゥン!!
突然背後からかけられた声に
私の体は目に見えて分かるほど固まった
『…女の子が一人でそんなもの持っちゃ駄目だよ
手伝わせて』
そう言ってヒョィっと左手に持っていたスクリーンを奪うと
私に目線を合わせてニコッと笑った
背筋を冷や汗が流れ落ちる