汚れた街の汚れなき天使
家に戻るととっくにまりあは帰宅していたらしい。
「眞子さん!まりあが作るの」
「じゃあ頼むわね♪」
カチャカチャと食器が触れ合う音が耳に心地いい。眞子も寂しかったんだろうな。これまで俺はろくに家に帰らなかったからずっと一人で……。
「ただいま」
「お帰りなさーい!!」
手に何かの塊を持ったまままりあが現れる。
「今日まりあがパン作るの!」
それでか。何かを形作っている。
「随分賑やかいな?」
俺がそう言うと眞子がふんわりと笑う。穏やかな時間。桃子が産まれたらもっともっと忙しくなるんだろうな。
「明日から好きな時間に見舞いいっていいぞ」
投げかけた俺の言葉に眞子の方が怪訝な顔をする。
「ちょっとヒデキ!どういう事??」
あせる眞子まで可愛いっつったら怒られるかな?
「立ち聞きまりあちゃんに聞いてみな?」
思わず笑みを漏らしながらそれだけ言うと、部屋へ着替えに向かう俺だった。