汚れた街の汚れなき天使
それから退院出来るまで更に1ヶ月。
時々、相変わらずな無垢な瞳で
「お父さんは元気かなぁ???」
そう聞くのだけが胸が痛くて……。
「そうだなぁ」
なんて誤魔化す俺だった。
事実を知ったら部屋を飛び出してしまうかもしれない。
それだったら、俺が受け止めてあげられる時にしよう。
だから今は言わないよ。
「海人の荷物持ってくね!」
自分では髪なんて巻けない不器用なまりあは、ストレートヘアを揺らしながら退院の準備。
俺が会社に頼んでいた社宅へ明日から移動する。
「まりあちゃん、海人の事頼むわね~」
母さんもすっかりまりあを気に入ったらしく、先日は親父と愛美と4人で食事に行ったとか。
いつの間にか俺……すっかり疎外されちゃってるし。
それは普通の幸せ。
当たり前に訪れる筈の幸せ。
それを初めて手にしたまりあは、本当に嬉しそうだった。