汚れた街の汚れなき天使
「知っていたんです……ニュースで見て」
案内された家には人気は無く、出されたお茶に口をつける。
「そうですか……あ、これ大した物じゃないですが」
眞子さんからのお土産を渡すと、わざわざすみませんと深々と頭を下げる。正直、もっと派手な人を勝手に想像していた。
……驚いたな。
髪を結い上げ地味ではあるが品の悪くないスーツを着ている。目元がまりあに酷似していて初対面なのに他人とは思えない。
そしてまりあと同じ、おっとりとした優しい雰囲気。
その向かい側、不思議そうに母を見つめるまりあがいた。
「ごめんなさい。あの人の暴力から……逃げてしまいました」
深く頭を下げるその人に、俺は思い出していた。
まりあを抱いた日に見た傷跡。
タバコの痕は以前にみた胸元だけではなく、背中、尻、至る所に刻まれていたから。
「まりあは大丈夫。海人がいるから」
これまでどんな生き方をしてきたか知らない母親は、事実を知り更に涙をこぼした。