汚れた街の汚れなき天使
ピピピピピ……。
時間を告げるベルが冷酷に鳴り響いた。
さよならの前に……。
これだけは伝えておかなければ。
「俺は、キミを大事に思ったから何もしなかったんだ。いらないとか、嫌いとかそんなんじゃない。じゃなかったら逢いに来ないだろ?」
こくん。
微笑みながら頷いたのを確認して扉に手をかける。
「また、逢いに来るから」
「待って!!じゃあ携帯っ」
名刺兼割引券を2枚出してその片方に携帯の番号とアドレスをすらすら書いていく。
「本当は禁止だからお店には内緒ね♪」
「いいの?俺が聞いちゃって」
「うん、嬉しかったから。Hなマリアじゃなくても嫌いじゃないって言ってくれる人初めてだった」
前よりも強く、お互いの手を握り締めながら……通路を抜け俺は家路に着く。
……筈だった。