汚れた街の汚れなき天使
「初めて行った奴ははまりやすいんだよな~俺もそうだった」
いやいや。
伊藤先輩のは違いますから。
あなたは本気で女の子の体に惚れたんでしょうが。
そんな俺の心を読んだのか先輩はちょっとだけ寂しそうに言った。
「お前に、大切な家族を風俗に取られた人間の気持ちが分かるか?」
「どういう……意味ですか??」
「まんまだよ。俺の姉貴は馬鹿でたまたま知り合った男に騙されてな。結婚するから一緒に借金を返そうとかなんとか言われちまって……ちょっと考えれば怪しいって分かるのになぁ?」
「…………。」
「そいで風俗に入っちまった。大金を手にした姉貴は金銭感覚がおかしくなったんだろうな。その男と別れてからも抜けられずにいるよ。ブランドもんを身にまとって一見幸せそうな……ま、俺には可哀想な女にしか見えねーけど。」
伊藤先輩に……お姉さんがいたなんて初耳だった。
しかも、そんな悲しい現実があったなんて……。