汚れた街の汚れなき天使
「でも……俺は信じます。彼女にはきっと事情が……」
「だから海人は甘いんだよ。んな訳ねーだろーが」
そんな事はない。
だって……キミが本当に金の亡者だったとしたら……泣くか??
そんな事したら、もし俺が金づるだったら、もう来ないかもしれない。
それに……右手でそっと財布の入ったポケットを触る。
携帯なんて……教えない筈だ。
そんな事を考えているうちに記憶が曖昧になっていて、目が覚めると先輩の部屋だった。
「ヒデキ~起きたみたいよ?海人君」
えっと。
この声は??
眞子さんだ!!
「本当によぉ……迷惑かける奴だぜ」
「何言ってるの!海人君にいっぱい飲ませたのヒデキでしょ~?」
幸せそうな二人。
そっか、ここは先輩と眞子さんが同棲してるアパート!?
ってまずいっっ!!!
「おはようございます!!ってかすみません!!俺記憶が無くって気がついたらここで……えっとその……」
テンパる俺に眞子さんは優しく言う。
「ヒデキが悪いんだから気にしなくていいからね~!!昨日だってどうせキャバクラでしょ??」
「んな事ねーから」
「じゃあこのポケットに入ってる名刺は何かな~??」
「…………。」
この状況は初めてじゃないけど眞子さんにはいつも驚かされる。
なんせあの先輩を手懐けてるんだからさ。
風俗嬢を……恨んでいるから??
少しだけ、先輩が遊び歩く訳が分かってしまった。
でもなぁ、こんなに美人で優しい彼女がいるのにやっぱり理解したくないよ。
そんな先輩がある日突然落ち着くのはもう少し後の話。