汚れた街の汚れなき天使
無言のまま、運ばれてきたスープをすする音だけの静寂。
窓の外に広がる夜景はキラキラ輝いていて……まりあはその中の1点を見ている。
そう、その視線が示す方向は……新宿歌舞伎町。
俺達が暮らす街を眺め、口元を少し緩めるとふいにくるっとこっちを見た。
ドキっ!!
答えが……来る???
「私ね、海人に話してない事たーくさんあるんだ」
そりゃそうだろ。
俺だってまりあに何にも話してないし。
「そんなの当たり前だろ?そういうのって一緒に過ごしながら、ゆっくり知り合って行くもんじゃないのか??」
「そんなもんなんだ」
「……と俺は思ってる」
そんなもんなんだ……と言われると自信もないんだけど。
「私ね?今まで人を好きとか思った事ないの。だけど海人と一緒にいると楽しくて、もっと一緒にいたいって思って……なんか胸が痛くて……これって好き?なのかな」
まりあの顔は……今までで一番に可愛らしい女の子の顔になっていた。