汚れた街の汚れなき天使
木造2階建てのその家は何年も前から手入れをされた気配が無い。
窓には所々割れた部分をガムテープで補強された跡がある。風が吹いたら倒壊してしまいそうだ……と言っても言い過ぎではない。
「ボロいでしょ?」
まりあは恥ずかしがる事も無く笑顔で俺を見ていた。
「まぁ……まりあみたいな売れっ子が住んでる家には見えねーな」
だよね~と頭を掻きながら玄関へと向かって行く。
今時珍しい古いタイプの錠で鍵を開けると乱雑に男ものの靴が散らばっていた。
ごくり。
この中にまりあの父親がいる。
上手に説得しようと用意したセリフなんて一瞬で真っ白で……俺ホントに営業マンかよ。
「お父さん!!ただいま」
その声を合図に、目の前の襖ががらっと開く。
そしてそこには、眼光の鋭い白髪混じりの人間が一人。間違いなく俺を睨んでいた。