汚れた街の汚れなき天使
待合室は結構な人で混雑していた。
この中の……誰かがマリアちゃんを指名しているのか??
そう思うと…俺はいてもたってもいられなくて。
それに!!
先輩遅くない?
そんなに後から呼ばれたのか!?
こんな知らない場所に一人でいる程落ち着かないものはない。
「城野様、お待たせ致しました。ご指名のマリアちゃんの準備が整いましたので……」
……。
立ち上がった男の顔を俺は見れなかった。
「こんばんは♪いらっしゃいませ、どうぞ〜」
さっきと同じ、声が聞こえたけど……俺は耳を塞ぎ店の外へ出た。
「海人!外にいたのかぁ。」
外でタバコをふかしていると伊藤先輩の声が響いてきた。
「遅かったっすね?」
「おぉ〜延長したからな!!どうだったよ、初めての風俗は?」
人待たせといて延長って……。
シャワーを浴びたせいなのか、いろいろすっきりしたせいなのか、先輩の酔いは少し冷めた様で口調もはっきりしてきている。
「普通ですよ。でも、何であんな所で働いてるんですかね?」
伊藤先輩がにやりと笑って口を開いた。
「海人……お前惚れたな??」
!!!!!!!!
「そんな訳ないじゃないっすか!!」
焦る俺に先輩の目は急に険しくなって言った。
「なぁ、絶対に本気になるんじゃねーぞ??」