汚れた街の汚れなき天使
「勝手な真似はよしてもらえませんかぁ。波多野さんとやら」
「こいつはうちの稼ぎ頭です。恋愛感情なんて必要ないっ!!!」
急に荒げられた声に思わずびくつく。
ただ者じゃない空気。
こんな父親だから……まりあは何も言えず働いてきたのか??
かと思えば。
「まりあ、こっちに来なさい」
「はい」
まりあを傍へ寄せ愛しそうに頭を撫でる。
「お前は俺の為に働いてくれるんだよなぁ?彼氏なんていらないよなぁ??」
俯いたまま何も言えなくなるキミに……何が真実なのか、正しいのか、俺にも分からなくなる。
「そうやって……まりあさんを縛り付けて楽しいですか?」
「何言ってやがる。全部こいつが望んでるんだ。」
「大体、彼女はまだ未成年です!!」
思わず叫んだ俺の言葉に、まりあの瞳が大きく見開かれた。
「海人……なんでそれ知って……」
「そこまで知ってるのか。しかもこいつから聞いたんじゃないらしい……一体何なんだ?お前さんは??」
ゆらり、肩を揺らしながら俺の前に立つ父親の目は、負けてしまいそうなぐらい血走っていた。