汚れた街の汚れなき天使
「ま、大方他にも借金があるか、それとも遊びに使ってるのか」
なんだか……溜め息つきたくなるけど、もの凄くありそうな予感。
-コンコン-
「ヒデキ~そろそろいい?海人君とまりあちゃんに夕飯作ったんだけど」
眞子さんに呼ばれ一旦話を中断する。
俺の脳内もはっきり言ってぐちゃぐちゃで、いいタイミング声をかけてくれて少しだけほっとしたりして。
「眞子さん、わざわざすみません……って、まりあ!?」
「どう?なかなかでしょ♪」
「海人……どぅかな??」
眞子さんに隠れるようにしていたまりあがおずおずと現れる。
「おー、海人が虜になる訳だ。可愛いお嬢さんじゃねーか」
そこに立っていたのは……。
鈍感な俺は気が付かなかったけど今まで大して手入れしていなかったんだろう。
そのままでも綺麗なロングヘアーは丁寧に梳かしたのかつやつや輝きを増していて、さらに服!!
「私の若いころのなんだけどね。可愛いから着せ替え人形しちゃった」
「メイクもね~仕事先で借りてるだけらしくて、顔の割には目元とか派手で浮いてたでしょ?お店は暗いから分からないかもしれないけど昼間はどうかなって。だからナチュラルにしてみたんだけど♪」
そうして選ばれたらしいちょっとだけ大人っぽい黒のワンピースとまりあの元々大きい瞳を引き出すような化粧はとても良く似合っていた。
「まりあちゃんは好き嫌い無い??ハンバーグ作ったんだけど」
「ハンバーグ好き!!!」
まるで姉妹のように寄り添う姿に、こんな些細な事も幸せに感じるんだな、と再認識する。
誰もが当たり前のように経験している事をまりあは知らないから、教えてやりたいんだ。