汚れた街の汚れなき天使
【第5章】初めての距離
「おはよう♪海人君。今日から頑張ってね!!あ、これ持っていって」
お下がりだけど、と眞子さんから受け取った紙袋には服がぎっしり詰まっていた。
「昨日着てた服ね~裾はほつれてたし、随分縫い直してあったわ。」
そうだったのか……。
「すいません。気付きませんでした」
「いいのよ。オトコって鈍感なんだから。ヒデキだってそうよ」
「悪かったな!!」
まりあにはボロの服を着せて、風俗で働かせて、自分は何もしないで、ふつふつと怒りが湧いてくるのが分かる。
だけど、それも今日まで。
安月給な俺だけど、静かで幸せな生活を送ろう。それが一番な気がする。
「じゃ、行って来ます」
今日は忙しいな。俺も家から服とか持って来ないと。
「先輩、すいません日課なんで」
そう言って電車を降り、ナイトフェアリーの前を通って出社する。
「毎日ここ通ってんのか?」
「馬鹿みたいですよね?だけど……」
「今日で最後だな」
最後の看板の君は、やっぱり笑顔で笑っていたんだ。