汚れた街の汚れなき天使
「お兄ちゃん、起きてよ!!」
何度揺さぶっても変わりのない表情。
やっぱり……あの子に関わったからなの??
あの子が私の大切な物、全部奪ってく。
「愛美?そろそろ面会時間終わるから」
【波多野海人-担当ナース波多野恵美子】
パイプベッドの頭の部分にはそう書かれている。
「運ばれてきたのがたまたまうちの病院で良かったわ。目が覚めたらすぐに電話するから」
「不幸中の幸いだけど海人の火傷の程度がこの位で良かったわ。意識さえ戻ればすぐに退院できるわよ」
海人によく似た優しそうな母は強く励ます。
全身に火傷を負った割には……幸いにも少しの皮膚移植で済んだ事。それは喜ぶべき事な筈なのに。
意識が戻らないなんて。
しぶしぶ病院を後にする妹。
あの、凄惨な事件から2週間が過ぎていた。