徒事徒言
【唯唯】
 意思を持つことが面倒だった。

 考える、それすらも煩雑に感じていた。

 ただ与えられる指示に従い、身体を動かす。それだけで充分だった。

 それ以外のコトに意味を見出そうとしたところで、此処では其れが報われることは無い。

「今日はここまで」

 その言葉を耳にするのが苦痛だった。忙しなく立ち振る舞っていられた時間からの強制的な解放。

 ――逆らうことは出来なかった。

 ただ冷たく立ちはだかる壁に囲まれた部屋に戻され、灯りも何も無い中で形ばかりの食事を摂らされ、そして床に就かされる。けれど、あれほど肉体を酷使していたにも関わらず、なかなか寝付くことが出来ない。

 闇の支配する中で身動ぎ一つもせず、ただ眠りに落ちるのを待つ。

 今日と何ら変わることのないだろう、明日のために――

 ただ、眠りに落ちるのを待つ。
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