徒事徒言
【呵呵】
 夢を見た。

 久しく思い出すことさえ無かった、懐かしい顔たちがあった。

 あの当時、世界は自分たちを中心に回るものであって、何人にも脅かされることなど無いと思っていた。

 外から差し込む温かな光は、希望に満ち満ちた将来を約束してくれているかのようだった。

 音は遮断されているようで何を話しているのかは解らない。けれど、誰かが口を開くたび皆が皆、呵呵大笑しているのだけは――それだけは何故か、理解できた。

 ……目が覚めた。

 静寂に包まれた、見慣れた景色が其処にはあった。

 ふと夢の中でしていたように笑ってみたくなり、見様見真似で声を出してみる。

 感情のこもらない乾いた笑い声は、ただ虚しく部屋に響き渡り消えていった――
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