徒事徒言
【毀棄】
 布のようなモノで目を被われ視界を奪われた。

 背中を銃の先で小突かれ、周りが見えないまま先を歩かされ、曲がり角やら岐路なのだろう――に当たると、肩を掴まれ方向を変えさせられた。そんなコトをどれだけ繰り返したのだろう。漸く、目的地に辿り着いたようだった。

 前方に人の気配を感じた。と、上から声が降ってきた。

「どうして連れて来られたか、心当たりはあるかね」

 首を振る。そのコトについて思い当たる節は全く無く、一瞬の逡巡も無かった。けれど、その態度がどうやら気に食わなかったらしい。

「出来れば荒っぽいことはしたくなかったが致し方ない」

 その言葉を合図に、また別の部屋に連れて行かれる。しかし、何を求められているのか解らない以上、どれ程の責め苦を与え続けられようと答えられる訳は無かった。

 ――拷問から解放された時には既に廃人同然になっており、建物の片隅に打ち捨てられてからの記憶は混濁したまま判然としなかった。
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