ショート・ミステリーズ!短編集その3
やがて君の両親は、さみしげにこの町から引っ越していった。

森の中の工場は、取り壊されることになった。

水のように月日が流れ、僕たちは小学校を卒業した。

行方不明になったかつてのクラスメートは、卒業アルバムの片隅でずっと笑っている。

僕たちは傷口を癒やすように、年をとった。

時々、君を思い出し、すぐに取り消す。

そんなことを繰り返すうちに、君はどこかのパラレルワールドで生きているんじゃないかと思うようになった。

君の失踪事件は、下級生へと語り継がれ、君は架空の人物のように見なされていく。

事件から10年以上経った今でも、君の姿は発見されていない――
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