ショート・ミステリーズ！短編集その３
冬を先取りしたような冷たい夕風に包まれながら、僕は額に手を当てた。

――今のは一体何だったんだろう。

今までに味わったことのない痛みだった。
まるで何処かから電波が飛来して、僕の頭を貫くような感じだった。

僕は顔を持ち上げた。
川沿いの家並みの向こうに、黒い森が見える。
君の消えた工場のあった、あの森である。

なんとなく予感めいたものを感じながら、僕は立ち止まった。

床屋や駄菓子屋の並んだ歩道の上で、ランドセルを背負った小学生たちが、河川の支流のように僕の横をすり抜けていった。

小学生たちが好奇の目で見ているのを気にせず、僕は腕組みをし、過去に思いを馳せる。

――ちょっと工場跡を見ていくか。

それは哀悼とは少しニュアンスが異なる、と僕は思った。

神様のいたずらによって消えた君は、どこかで生きているかもしれない。

そんな君を想う――そういうことだ。

僕はポケットに手を突っ込み、森へ向かった。
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