ショート・ミステリーズ!短編集その3
夕闇の降り始めた森の中を、僕は不思議な感覚で歩いた。

道の脇に、コンクリートの残骸が転がっている。
逞しい植物が、蔓を伸ばしそれをグルグルに絡め取っていた。

「ここを歩くのは、10年前のあの日以来だな……」

事件のあと、僕はこの場所を恐れていて、ずっと来られないでいたのだ。

感傷に浸りながら、しばらく進むと、老人の腕にも似た樹の間に、白いものが見えてきた。

工場跡の石畳である。

あの事件のあと、工場は取り壊され、石塀やコンクリートの破片がこの場に残されていた。

僕は雑草を踏み分け、石畳を踏んだ。
すると、またザクリと頭痛がした。
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