ショート・ミステリーズ!短編集その3
岸田の部屋は、質素なワンルームだった。

由美が来ることを配慮したためか、綺麗に片付いていた。


「うわあ、すごいですね」

由美はタンスの上を見て、驚きの声をあげた。

大会のトロフィーや表彰状が、ズラリとならんでいる。

「まあ、一応主将だからね。高校時代は結構、強かったんだよ」

岸田はトレーにコーヒーカップを2つ載せて、テーブルの前に座った。

由美はスカートの裾をひるがえし、岸田のほうにクルリと振り向く。

「そんな。今でも充分ですよ。みんな岸田先輩のこと慕ってますよ」

「いやいや、最近、自分の限界を感じちゃってさ。……まあ、とりあえずそこに座ってよ」

岸田は、テーブルの反対側を指さした。
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