ショート・ミステリーズ!短編集その3
2人は、遠征で利用する旅館や交通機関、費用についての打ち合わせをした。

由美は正座にしていた足を崩した。

「これでだいたい決まりですね」

「……そうだね」

テーブルの脇に伸びた由美の右足を、岸田は粘っこい視線で見つめた。

生唾を飲み込んだのか、岸田の喉仏がゆっくり上下した。


岸田の目つきに気付いた由美は、ゆっくりと足を正座にした。

2人の間に流れる、ぎこちない空気。

「あ……いや……」

岸田は、うろたえたように、視線を泳がせる。


岸田は真面目な人間だ、と由美はずっと思っていた。
だから、今日は1人でやって来たのである。

しかし、先ほどの岸田の目つきは、獲物を見つけた肉食獣のそれだった。
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