ショート・ミステリーズ!短編集その3
智春様のご申し出に、私は頬を朱に染めました。

「そ……それはまことですか?」

智春様は、こっくりと頷きになり、
「勿論です。ぼくは嘘は言いません」

「でも……私には、田舎に病床の父がおりまして……」

「お呼びしたらいいじゃないですか。私の家には、腕のよい医者がたくさんおります。きっと、良くなるでしょう」

嬉しさのあまり、私の胸のうちは、焦げるように熱くなりました。

ですが、その反面、ある種の恐ろしさも覚えました。

――こんな幸運なことがあっていいのだろうか?

そうは思ったものの、お断りする理由がありませんでした。

私は、智春様の澄んだ瞳を見つめ、深く頷いたのです。

きっと、仏様が私にお恵みをしてくださった、そう考えたのです。
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