ショート・ミステリーズ!短編集その3
竹の葉が擦れ合い、囁き声のような音を立てます。林間を通り抜ける風が頬を撫で、私は身震いしました。

その瞬間、茂みの中から何かが飛び出して来たのです。

「きゃあっ!」と、私は智春様の腕にしがみつきました。

飛び出したのは、薄汚れたモンペを着た、人相の悪い大男でした。

智春様も身を堅くしながら、「誰だきみは」とおっしゃります。

大男は分厚い唇を大きく曲げ、
「この道は俺たちの物なんだ。通りたいのなら、金をよこしな」

「そんなことが聞けるか。戻りましょう、須美さん」

智春様は私の手を取り、来た道を引き返そうとなさいました。

しかし、いつの間にか、背後にも大男の仲間が2人回り込んでおり、私たちはその場に立ち尽くすしかなかったのです。
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