ショート・ミステリーズ!短編集その3
朝になりました。

頭上を仰ぐと、丸く切り取られた青い空が見えます。

私は膝を抱えて、地面にずっと座っていました。

そして、誰かが通りかかってくれるのをひたすら待ちました。

ですが、青い空がだんだんと山吹色に変わり、からすが飛び始めても、井戸のそばを通る足音は、いっこうに聞こえて参りませんでした。

情けない腹の虫が、ぐうぐうと騒ぎます。
私はそれをこらえながら、ひたすら待ちました。

不幸なことに、夜を迎えても、誰かが井戸を通りかかってくれることはなかったのです。
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