{霧の中の恋人}
「おい!瑞希!?大丈夫か?」
どうやらトリップしていたらしい。
気づくと、心配した大ちゃんの顔がドアップであった。
「あ、大丈夫、大丈夫。何でもない」
「今すっげー眉間に皺よせて難しい顔してたぞ。
悩み事か?心配ごとか?
いつでも相談に乗るからよ。そんなに思いつめんなよ」
…相談ねー。
今ここで「大ちゃんって、好きな人いるの?」
って質問できたら、即解決できる問題なんだけどな。
やっぱり恐くて聞けないよ。
「本当に何でもないよ!大ちゃんってば心配しすぎ!」
「そうか?でもよー、そんな顔してるとモテねーぞ!」
「…そんなに変な顔してた?」
「うん。すげーブサイク」
「え、嘘!?やだ!」
慌てておでこに手を当てると、大ちゃんがプッと吹きだし、おでこを人差し指で小突いた。
「嘘だよ、ばーか」
「嘘!?なによバカ!」
「じゃあな。何かあったらすぐ言えよ」
大ちゃんはクスクス笑いながら手を振って去っていった。
「もう、大ちゃんってば」
ブツブツ言いながら、正面を向くとニヤニヤした泉の顔があった。