{霧の中の恋人}
「久木さん、ハイネックのセーターを着ているから暑いんじゃないですか?
着替えたらきっと涼しくなりますよ」
「…そうだな」
「それに何だか疲れているみたいだから、少し休んだらどうですか?」
「…そうかもしれない…。
君の言う通り休んだほうがいいかもしれないな…」
……おかしい…。
ここで、いつもの久木さんなら
『何を着ていようと、君には関係ないことだ』とか
『君に心配されるようになったらおしまいだな。ほっといてくれ』
なんて、皮肉混じりの言葉が返ってくるところだ。
私の言葉に素直に同意するなんて、今まで一度だってなかった。
やっぱり久木さんの様子がおかしい…。
まさか…!!