{霧の中の恋人}
「久木さん!もしかして熱があるんじゃないですか!?」
私は背伸びをして、久木さんのおでこに手を当ててみた。
熱い!!
おでこが尋常じゃないくらい熱い。
やっぱり熱があるんだ!
この熱さからして、相当高そうだ。
「久木さん!やっぱり熱ありますよ!」
よく見れば、久木さんの瞳はトロンと熱っぽくって、呼吸も荒らそうだ。
「…冷たい…君の手は冷たいな…」
久木さんがうわ言のように、ポツリと呟いた。
「今まで水を使っていたからだと思いますけど…」
「…そうか…。冷たくて気持ちがいい…」
久木さんはおでこに当てた私の手を、上からギュッと握りしめた。
ドキッ!!
上から重ねられた手は、大きくてゴツゴツした男の人の手だった。