{霧の中の恋人}


私はまず救急箱の中身を確認した。


風邪薬が2日分か…。

足りるかしら…。


おでこに貼る冷却シートは切らしている。



………。



あんな久木さん初めてみた…。

いつも毅然としていて、自信満々で、人に弱みを見せないようなあの人が、あんな寂しそうな瞳をするなんて…。


それに…


私がさっき自分で言った言葉にも驚いた。



『関係ないことないでしょう!
家族なんだもの!
心配するのは当然のことです!』


とっさに出た言葉だった。


家族…。


お母さんが死んで、私には家族が一人もいなくなったと思っていた。

それが、とても悲しくて、不安で……。


久木さんを家族と思っていいのかな。


もしそうなら嬉しい。


家族…。

たった一人の家族…。



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