{霧の中の恋人}
「…ああ…」
ようやくレンゲを手にとり、雑炊をすくって、それを口に入れて一言「…熱い」と呟いた。
そっか、猫舌だったんだっけ…。
「熱いですか?
食べられますか?」
「…大丈夫だ」
冷たいお茶を口に含んで言った。
久木さんは私が作った雑炊を、不味いとも美味しいとも言わず、ただ無言でもくもくと口に運んだ。
美味しかったのか、不味かったのかは分からなかったけど、土鍋に入った雑炊は空になっていた。