{霧の中の恋人}
まさか箱買いをしていたとは……。
簡易食をこんなに備蓄して、どんだけ物ぐさなんだろう…。
「そんなんだから体調を崩すんですよ!
こんな物ばかり食べて、熱が出て当然です!
もうっ!私、買い物に行ってきますから!」
そうだよ。
たかだか近所のスーパーに行くだけなのに、なんでダメなのよ。
1時間もかからないのに、1人で留守番も出来ないなんて幼稚園児か!
ついにプチっときた私は、久木さんをほおって買い物に行く事にした。
食べ物だってないし、シャンプーだって残り少ないし……
部屋を出ようとしたとき、腕を思い切り掴まれた。
「…分かった。俺も行こう」
「…へ?久木さんも一緒に?」
「そうだ。何か問題でも?」
問題があるっていうか…
「まだ完全によくなってないのに、外に出るなんてダメです!
また風邪をぶり返しますよ!」
3日間で、微熱程度まで熱は下がったが、病み上がりでフラフラ外に出るなんていいはずがない。
「もう大丈夫だ。問題ない」
「ダメですったら!
久木さんは大人しく家に…ってギャーーー!!」