{霧の中の恋人}
「な、なにしてるんですか!?」
「見て分からないか?
着替えてるんだ」
突然、パジャマを脱ぎだした久木さん。
私は目を瞑って、勢いよく後ろを向いた。
「もうっ!突然着替えるの止めてください!」
「外出するのにパジャマでは出かけられない。
着替えてなにが悪い」
もう!
そういう事じゃなくって!!
「ギャーギャー騒ぐな。
本当に君はうるさい奴だ」
久木さんは呆れたように溜め息をついた。
これだけ悪態がつけるようになったんならもう大丈夫。
いつもの久木さんだ。
まったく問題なし!!
あの、不安げで物悲しそうな姿はどこへやら…。
どうやら彼は、全快したらしい。