{霧の中の恋人}

『瑞希!どうしたんだ!?』


『なんでもないよ…』


『何でもなくないだろう!
そんな泥だらけになって、怪我までして何があったんだ!?』


『…今日、図工でスケッチの授業があって、クラスの男の子が、金色の絵の具がなくなったって言って…。
私がそれを盗んだって…』


『疑われて、怪我させられたのか!?』


『うん…。たまたま昨日お母さんに新しい絵の具を買ってもらって、同じの持ってたから…』


『許せねぇ!どこのどいつだ!』



大ちゃんはすごく怒って、その男の子が無くしたっていう絵の具を必死で探して疑いを晴らしてくれたんだよね。


スケッチをしてた草むらの中を、暗くなっても探しまわってくれた。


『瑞希に謝れ!』


草むらの中に落としていた絵の具を男の子に突きつけて、すごく怒ってくれた。


『瑞希が人の物を盗むわけないだろう!』って私を信じてくれた。



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