{霧の中の恋人}
眠ったか眠っていないか分からない程の、浅い眠りから目を覚ますと、もう朝になっていた。
ベッドから起き上がり、自室を出るとリビングのソファーに久木さんが座っていた。
「久木さん、こんな朝早くにどうしたんですか!?」
今まで、彼がこんなに朝早くに起きているなんてこと一度だってなかった。
「別にどうもしない。たまたま目が覚めただけだ」
「そうですか。じゃあ朝ご飯食べますか?」
問いかけると、久木さんはソファーから立ちあがり、私の正面に立ってジーッと私の顔を見つめた。
何!?
私の顔に何かついてるの!?
こんな寝起きの状態の姿を、マジマジと見られたくないんだけど…。
久木さんは私の顔を見つめたあと、またソファーに座り直して「食べる」と言った。
一体何だったんだろう?