{霧の中の恋人}
周りのからかう声に、なっちゃんは顔を赤らめて照れているようだった。
背中かしか見えないけど、きっと大ちゃんも同じ表情を浮かべているのかもしれない。
どうみても付き合いたての初々しいカップルにしか見えない。
胸の痛みを抑えるように、胸に手を当てる。
やっぱり見るんじゃなかったな…。
家に帰ろう…。
帰りにスーパーに寄って、シチューを作って久木さんと食べよう。
ニンジンは細かく切って、お肉は少し贅沢してちょっと高い牛肉を入れて…。
クルリと方向転換しようとした時、声がかかる。
「瑞希ちゃん、大地に会っていかないの?」
目の前に立つのは、フットサークルの水原部長だった。