{霧の中の恋人}

「水原部長…」


「久しぶりだね。
お好み焼き屋で会って以来かな」


「そうですね。
お久しぶりです」


水原部長は相変わらず爽やかで、人の良さそうな穏やかな笑みを浮かべている。


「これから練習ですか?」


水原部長はジャージを着ているサークルのメンバーとは違い、私服姿だった。


「いや、最近忙しくてね。
ちょっと様子を見に来ただけなんだ。
これでも4回生だからね」


「4回生の方だったんですか?」


普通、サークルは3回生で引退する人が多い。

就職活動や、卒業論文なので忙しいからだ。


現に、就職活動を始めた大ちゃんもそろそろ引退するという話を聞いた。


「俺は就職活動もしなくていい身だから、暇な時に練習に参加させてもらってるんだ。
部長なんて名ばかりだよ」


「そうなんですか」


就職活動をしなくていい身ってどういう事なんだろう?


「それより瑞希ちゃん
大地には会っていかないの?」


水原部長の言葉に、一瞬言葉がつまる。


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