{霧の中の恋人}

水原部長の突然の告白から数日──


特に何が変わったわけでもない日常が過ぎていった。

変わったことといえば、水原部長が時々会いに来て他愛もない話をしていくぐらいだ。


きっと彼は大人だ。

告白のあとの「ゆっくり考えてくれればいいから」という言葉の通り、私に気持ちを押しつけるでもなく、ただ私の様子をそっと傍で見守ってくれる。

隣にそっと座って穏やかな笑みを浮かべ、優しい気持ちを分けてくれる。


でも無関心というわけでもなくて、私の痛みに鋭く突っ込んでくることもある。

それでも絶対に入りこんで欲しくないことには踏み込んでこない。


彼は大人というだけではく、人間としても出来た人なんだろう。

バランスのとれた接し方に、癒されている自分がいた。


この人と付き合ったら、きっと楽なんだろうと漠然と思った。


それでも私は……




午後の昼下がり

私は大学の敷地内にあるベンチで次の課題に使われる本を読んでいた。


日光がベンチに降り注ぐ。

光のシャワーを浴びながら穏やかな午後を楽しでいた時だった。


ふっと光が遮られ、光に影ができる。


「瑞希さん?」


顔をあげるとそこに立っていたのは、マネージャーのなっちゃんだった…。


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