{霧の中の恋人}

「松本夏美です。あなた大地くんの幼馴染の瑞希さんですよね?」


「ええ…そうですけど…」


この子には悪いけど、正直会いたくなかった。

それにしても私に一体何の用なんだろう?


「あの…私に何か用ですか?」


「突然ごめんなさい。
大地くんが瑞希さんのこと大事な幼馴染だっていうから一度お話ししてみたかったんです」


「はあ…」


「大地くん、瑞希さんのこと妹みたいに大事に思ってるって言ってましたよ。
大地くんにそんなに大事にされて羨ましいなぁって思って」


松本さんは無邪気な笑顔で言った。


羨ましいのはこっちのほうだよ。

何年間もずっと私が望んでいたポジションにいるんだから…。


妹…

大ちゃんにとって、やっぱり私はそういう風にしか見られていないんだ…。


「あっ、私この間から大地くんと付き合うことにしたんです。
入学したときからずっと彼が好きで、思い切って告白してみたんです。
そしたら、大地くん『俺もずっとお前のことが好きだった』って言ってくれて…」


やだ…

もう聞きたくないよ…。


私は耳を塞ぎたい衝動にかられる。




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