{霧の中の恋人}
「えっ?」
「辛い気持ちを自分の中に押し込んで我慢して…
表には出さないように必死になって…
余計に辛くならないの?」
「…辛くないって言ったら嘘になりますけど…
それでも私は、どんな時でも笑っていたいんです…」
いつも笑顔でいたお母さんのように、素敵な女性になりたいから…。
私の言葉を聞いた水原先輩は一つ溜め息を吐きだす。
「それでも君は1人になったら泣くんだろう?
人知れず涙を流している君を想像すると、たまらない気持ちになるよ…」
「心配してもらってありがとうございます。
でも、私なら大丈夫ですから」
その瞬間、頭をグイッと引き寄せられて、水原先輩の肩に乗せられた。