{霧の中の恋人}
ついに来るべき時が来てしまったのかもしれない…。
大ちゃん本人の口から、彼女が出来たことを聞かされるのかな。
『…実は俺、彼女が出来たんだ。
大学に入ってからずっと気になってたんだけど、この間告白されてさ。
付き合うことにしたんだ』
大ちゃんの言葉を想像するだけで泣けてくる。
それを避けたくて、ずっと大ちゃんから逃げてきた。
聞きたくない。
本人の口から聞いたら、すべてが終わってしまうような気がするから…。
何年も想い続けてきたこの気持ちをどこに仕舞えばいいのだろう。
大ちゃんに特別な女の子が出来るなんて嫌だよ…。
行き場のない気持ちが、涙となって溢れてきそうになる。
グッと堪えて、無理やりそれを胸に仕舞いこもうとすると、胸がいっぱいになって痛みを感じる。
苦しい…。
胸が苦しい…。
ソファーに体育館座りして、両手で携帯を持ち、それを抱きしめるように縮こまる。
何がいけなかったんだろう…。
私がもっと頑張ればよかったのかな。
大ちゃんに告白していたら何かが変わったのかな?
昔、大ちゃんが長い髪が好きだって言ってたから、それ以来髪を伸ばし続けて、服装だって子供だと思われないように大人っぽいものを選んできた。
それでも、大ちゃんの好みの女の子になれななったのかな。
もっと別の女の子が好きだったのかも…。
松本さんは短いショートヘアで、カジュアルな服装だったから…。
ううん、大ちゃんは外見で人を選んだりしない。
きっと彼女には大ちゃんに選ばれる何かがあったんだろう。
私がもっと魅力的な女の子だったら良かったのに……。