{霧の中の恋人}
大ちゃんの気持ち
公園に着いて、中央の広場まで足を進めると、噴水の石垣に腰掛けている大ちゃんの姿が目に入った。
遠くから大ちゃんの姿を見ただけなのに、心臓が高鳴る。
決意が揺らぎそうになる気持ちを奮い立たせて、一歩一歩前に進むと、私に気がついた大ちゃんが石垣から腰を上げた。
「瑞希、悪かったな。
今日バイトはなかったか?」
「…うん、今日はお休みだったから大丈夫だよ」
「………」
「………」
そして、一呼吸の沈黙。
私はこの瞬間のことを、昨日の夜、一晩中ずっと布団の中で考えてた。
大ちゃんから恋人ができたという報告を聞く前に、私の気持ちを伝えようと思った。
何回も何回も、この場面を頭の中でシュミレーションしてみた。
『大ちゃんに彼女が出来たことは知ってるけど、どうしても大ちゃんに私の気持ちを伝えたいの』
この前振りを言ったあと…
『私、大ちゃんのことが昔からずっと……』
よし、この流れでいこう。
頭に浮かんでいる台詞を口に出そうとしたとき、私よりも大ちゃんのほうが先に口を開いた。
「瑞希、
水原部長と付き合ってるって本当か?」