{霧の中の恋人}
「…えっ?何それ?」
想像していた事とまったく違うことを言われて戸惑った。
「お前、最近水原部長と一緒にいるだろ?
周りでお前と水原部長が付き合いだしたって噂になってる。
その噂は本当のことなのか?」
嘘…
そんな噂が流れていたなんて知らなかった。
「違うよ!付き合ってないよ!」
大ちゃんに誤解されたくない気持ちの一心で、私はすぐに否定した。
「でも…昨日見たんだ。
お前と水原部長が抱き合ってるところを…」
そんなことしてない!と言おうとして、昨日ことが頭をよぎった。
水原部長に肩を貸してもらっていた場面。
傍から見たら、抱き合っているように見えちゃったのかもしれない。
あの時、大ちゃんに見られちゃってたんだ!
「違うよ!
確かに水原部長に告白はされたけど、私が好きなのは大ちゃんだもん!」
勢い余って口に出してしまってから、すぐにマズイと思った。
手で口を押さえるも時遅し。
大ちゃんにしっかりと伝わってしまったらしく、大ちゃんはポカンと口を開けて驚いている。
ああ…
こんな風に気持ちを伝えるはずじゃなかったのに…。