{霧の中の恋人}
「そんなにスゴイ人だったんだね。
ちょっとビックリ」
もしかしなくても、そんな人に告白されたって、もの凄いことだったんじゃ…。
きっと、あの人の告白を断る女の子なんていないよね。
…私って何様?
「瑞希!」
突然、背後から肩を叩かれて缶コーヒーをこぼしそうになる。
「大ちゃん!
びっくりしたー!」
「わりぃ!
こぼさなかったか?」
「うん、何とか」
大ちゃんは申し訳なさそうに謝って、背後から私の正面にまわった。
「瑞希、松本にちゃんと話してきたから。
それで、ちゃんと納得してもらった」
大ちゃんの言葉に私は「…うん」と答える。
うわ…
大ちゃんの顔が見れない…。
昨日の今日だし、なんか緊張する…。
でも、ちゃんと言わなくちゃ!
「私も今日、水原部長にちゃんと断ってくるね」
思い切って顔を上げて、大ちゃんの顔を見ながら言った。
大ちゃんは「分かった。今日の夜、メール……いや、電話するな!」と言って、私の頭をポンポンと叩いた。