{霧の中の恋人}
「瑞希さん、大地さんと付き合うことになったんだ」
痛んだ花を摘んだり、鉢花の手入れをしていると、後ろの俊介くんから声がかけられた。
「えっ!どうして知ってるの!?」
「店の奥まで聞こえてきたよ」
あれだけ騒いでいれば聞こえるのも当たり前か。
「…うん、何かそういうことになって」
「だから言ったでしょ。
早とちりすると、真実が見えなくなる…って」
確かに、私は大ちゃんの言葉を聞いて、諦めかけていた。
でも、それじゃまるで俊介くんには全部分かっていたみたいじゃない。
チラリと私の顔を見て、俊介くんは言う。
「分かってたよ。
2人が両思いだったってことは」
「えーーー!
なんで!?どうしてそんな事がわかるの?」
俊介くんはヤレヤレと言ったように溜め息を吐いた。
「2人とも分かりやす過ぎ。
気付いていなかったのは当人達だけじゃないの?
きっと、周りの人は皆気付いてたと思うよ。
鈍感なんだよ2人とも」
鈍感……
この言葉を聞いて、さっきの水原部長の言葉を思い出す。