{霧の中の恋人}
封をあけると、3つ折にされた一枚の便箋が入っていた。
それをゆっくりと開く。
封筒に書かれた文字と同じ。
お母さんの文字が便箋にぎっしり書かれていた。
─────……
『瑞希へ』
この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないという事だね。
出来れば、この手紙が瑞希の手に渡ることがなければいいと願いながら、今筆をとっています。
瑞希の傍にいられなくなってしまって、ごめんね。
今、泣いてるかな?
瑞希のことだから、きっと泣きたいのを我慢しているかもしれないね。
瑞希は、とても優しくて強い子だけど、辛いときに辛いと言えない子だから、それが心配です。
勝手な願いと分かっているけど、どうかお母さんからの最後のお願いを聞いてください。
1つは、辛いときは素直に人を頼ってね。
泣きたいときは、泣いていいんだから。
そして、もう1つ。
この手紙を届けてくれた久木さんの言うことを信じて、久木さんの言うと通りにしてください。
どうか、お願いね。
最後に
お母さんは瑞希と出会えて、幸せでした。
傍にはいられなくても、ずっとあなたの事を見守っているからね。
愛する瑞希が幸せになれることを願っています。
どうか幸せに…。
──静香
────……