{霧の中の恋人}
「…瑞希さん、ボーっとしちゃってもう色ボケ?」
俊介くんの声で我に返った。
「…俊介くん…
私って、そんなに鈍感かな?」
「そうだね、鈍感だね」
俊介くんは間をおかずスッパリと言い切った。
そんな…少しぐらい否定してくれてもいいのに…。
恨めしい目を俊介くんに送ると、俊介くんは大きなアクビをした。
「瑞希さんは鈍感だよ。
だって、僕が瑞希さんのことずっと好きだったのも気づいていないでしょ?」
そしてもう一つ、俊介くんはアクビをこぼした。
…ん?
何か、もの凄いことを、今サラリと言われたような…。