{霧の中の恋人}

「好きって…?ええっ?」


俊介くんが言う好きってどういう意味?

でも、この話の流れからすると……



「ほら、やっぱり気付いてなかった」


俊介くんは可笑しそうにクスリと笑った。


「…えーっと、その…」


これって一応告白…だよね?

こういうのって、断るべき?
それとも流すべき?


私が何て答えていいか言い淀んでいると、俊介くんは眠そうに目を擦りながら言った。


「別に気にする必要はないよ。
瑞希さんと大地さんが両思いだってことは前から知っていた訳なんだし、こうなることも分かっていたから」


「…その…気付かなくてごめんね…。
私って、すごい鈍感だね…」


気まずくて謝る私に、俊介くんは天使のような笑顔で微笑んだ。


「いいんだ。
そういう瑞希さんだから、僕は好きになったんだ」


聞いているほうが恥ずかしくなるような台詞とサラリと言ってのける。



昔から俊介くんは、クリクリしたくせ毛で、たまに微笑む笑顔は天使のようだった。

それは今でも変わらない。


でも、いつの間にか子供の顔ではなく、大人びた表情を浮かべるようになっていた。

ずっと一緒にいたのに、こんな表情に今まで気がつかなかった。



私は色んなことに気がついていないのかもしれない。


気がつかないところで、色んな人を傷つけているのかもしれない。


そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。




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