{霧の中の恋人}
「そんな顔してると、あっという間に大地さんに振られちゃうよ。
ついでに、うちのお客さんも逃げていっちゃうから、その顔どうにかしたら?」
「えっ、そんなにヒドイ顔してた?」
「うん、世界が滅亡するかのような絶望的な顔だった」
絶望的…な顔って。
「瑞希さんの魅力は笑顔なんだから笑っていたほうがいいと思うよ」
私の魅力は笑顔?
俊介くんの言葉に促されるように笑ってみせると、俊介くんはブハッと盛大に吹き出した。
「変な顔」
「ちょっとー!笑ったほうがいいって言ったのは俊介くんでしょー!」
珍しくケラケラと大笑いする俊介くんにつられるように、私も笑った。
俊介くん、ありがとう───
どっちが年上か分からないけど、いつも俊介くんには鋭い助言をもらって助けてもらっているね。
赤
ピンク
白
黄色
オレンジ
店の中には、色とりどりのシクラメンやポインセチアが並んでいた。
人の優しさも、花の色のように十人十色違うのかもしれない───
そんな事を思った。