{霧の中の恋人}
結局、チェックのファーがついたワンピースに、歩きやすいパンプスを合わせることにした。
あ!あと髪型どうしよう…。
伸ばしたままだとファーに髪の毛が広がっちゃって、あまりバランスがよくないし…。
バタバタと洗面所に移動して、髪の毛を下したり結んだりしてみる。
ただ結ぶだけだとつまらないから、毛先をコテで巻いて動きをつけて一本に結わく。
それに可愛いファーの飾りをつけてみた。
洗面所の鏡で、左右後ろをチェック。
うん、これでいいかも。
満足のいく髪型にできた!
「ニヤニヤ気持ち悪い。
済んだのならさっさとどいてくれ」
鏡越しに不機嫌な表情がわたしを睨んだ。
そして身体で押し退けられ、鏡の前から強制退出。
「ちょっ、久木さん!
なにも押し退けることないじゃないですか!」
私の訴えも虚しく、久木さんはバシャバシャと顔を洗っている。
「それにしても、珍しく早起きですね
どこかに出かけるんですか?」
顔を洗い終わった久木さんに問いかける。
しかし、タオルから覗かせた瞳にまたしてもジロりと睨まれた。
「君に起こされた。
朝早くからバタバタうるさい」
「ご、ごめんなさい…」
緊張であまり寝られなかった私は、朝の5時からお風呂に入ったり、用意で家の中を行ったり来たりしていた。
ここは素直に謝るべきだよね。